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サムライとヤクザ ―「男」の来た道 [本の紹介★★★]


サムライとヤクザ―「男」の来た道 (ちくま新書)

サムライとヤクザ―「男」の来た道 (ちくま新書)

  • 作者: 氏家 幹人
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 新書


「男」とは何であったか。
著者はまず、戦国時代や江戸時代初期の史料を引用し、かつて「男」は単なる生殖上の区別ではなく「戦闘者」を指す言葉であったことを示した
そしてその戦闘者としての「男」が、江戸時代以降(近代に至るまで)どう移り変わったかを分析する。

武士は元来戦闘者であるにもかかわらず、時代とともに「男」性を喪失し、そのギャップに苦しむ。
それは都市生活者である旗本に顕著である。
一方、武士と言いづらい下級の武家奉公人や、全く町人であるヤクザによって、「男」は(良くも悪くも)継承された。

本書に描かれる、身分の低い「男」達、そして軟弱化した「武士」の姿に、同性として悲しみを含んだ共感を感じた。

潜入ルポ ヤクザの修羅場(鈴木智彦) [本の紹介★★★★]


潜入ルポ ヤクザの修羅場 (文春新書)

著者は、ヤクザ向け雑誌の編集長を経て、その世界のフリーライターとなった人物。
ヤクザの多い東京の「ヤクザマンション」や、大阪飛田のマンションに住まい、ヤクザに物理的・人間的に密着した著者の周辺に起こった出来事を、ライターとしての目線からいくつか紹介し、ヤクザのありかたや社会についても考える。

作者の周辺での死亡事故・事件も多く、知合いの死者も少なくない。
しかし、ヤクザは基本的に害悪としながらも、編集者生活の間は基本的に楽しかったと良い、記者生活も悪くないという。
しかし、最近では社会的にヤクザは排除されている。
それに伴い、取材対象との接触が難しくなるとともに、雑誌等の購入者も減っていく…。
今、著者は、ヤクザとの関係もある企業で、アルバイトもしているという。

あとがきの最後にある言葉が印象的だった。
「ちなみに、私“個人”は愛煙家であっても、他人に推奨したことは一度も無いし、これからもすすめるつもりはない。」
タグ:ヤクザ

旧石器遺跡捏造 [本の紹介★★★]


旧石器遺跡捏造 (文春新書)

2000年の11月、でかいニュースがあった。
旧石器の遺跡・発掘が、捏造であったという話である。

私は考古学に特に興味が有ったわけではないが、「遠く離れた二箇所の石器の断面が合致した、これは人的交流を意味する」というものは、私も新聞で読んで驚嘆した記憶がある。
その新聞記事も、徐々に露見していった捏造の一つであった。

今回紹介するこの本では、科学報道に関わる著者が、捏造に気づかなかった研究者たちの様子をさぐる。
ある人物がいるときのみ、旧石器は見つかった。
発見率は9割を越え、偶然にしてはできすぎる確率であったが、他の研究者にとってはその高い確率こそが信用の根拠の一つになっていたという。

実は(考古学者ではなく)人類学者たちは、その旧石器の成果に懐疑的であったという。
しかしその声は、考古学の世界ではほぼ完全に無視された。
捏造が露見したあとも、研究者たちの多くは、自分の関わった遺跡が捏造だとはなかなか考えなかった。
目の前で発掘されることで自分の経験となっており、他人任せでないという確信があったからである。

この捏造で、四半世紀の考古学研究が振り出しに戻った。
発掘成果の検証可能な記録など、教訓を生かすことにはつながったが、失ったものは大きい。
マスメディアに関わる人間としての自省を感じられた。
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