すしの歴史を訪ねる(日比野光敏) [本の紹介★★★★]
以前、ふな鮨の本を紹介したように、淡水魚を中心に昔ながらの熟れ鮨に興味を持っております。そして書棚に並ぶ本書のタイトルを見た瞬間ひらめき、手にとって見ると、期待通りすしの歴史をなれ鮨(熟れ鮨、馴れ鮨)から開始していました。
鮨というのは今も昔も少しだけ特別な食べ物。その理由の大きな部分は調理の手間にあります。調理の手間を削減し早く食べるため、熟れ鮨の発酵の時間を短縮し、そして押し寿司などの早鮨、握りずしへと変貌していきます。本書では、歴史が長くその一方で消え去ろうとしている熟れ鮨を中心にあつかい、握りずしへの変化の過程を紹介しています。
熟れ鮨といえば現代ではふな鮨ぐらいしか知りませんでしたが、今でも各地にわずかながら命脈を保っています。使われる魚は、マス、鮎、ウグイ、ハタハタ、鰯…etc。塩漬け魚を飯につけて、発行させ程よく酸味が回り……。おいしいふな鮨を食べたことのある私は、おもわず琵琶湖へ熟れ鮨を買いに行ってしまいました。押し鮨や握りずしは、皆さんも味の想像がつくでしょう。とにかく食べたくなる一冊です。
そう云えば先夜、狭いカウンターでふな鮨の話を小耳にはさみました。金沢にいた時、麹のついた大根と魚を挟んだ鮨を食べた事がありました。かぶら鮨でしょうか。
私の郷里の徳島では秋祭りには鯵とボウゼの姿鮨を必ず作っていました。鯵を頭のついたまま開き内臓を取り出し、暫く鮨酢に付けておきます。酢が程好くまわったら、頭から腹まで鮨飯を詰め重石をして一晩寝かします。しょうが、スダチが薬味についていました。最近は年中スーパーの弁当売場に並んでいます。
徳島では秋のご馳走です。
by 濱田八郎 (2012-04-09 11:56)