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潜入ルポ ヤクザの修羅場(鈴木智彦) [本の紹介★★★★]


潜入ルポ ヤクザの修羅場 (文春新書)

著者は、ヤクザ向け雑誌の編集長を経て、その世界のフリーライターとなった人物。
ヤクザの多い東京の「ヤクザマンション」や、大阪飛田のマンションに住まい、ヤクザに物理的・人間的に密着した著者の周辺に起こった出来事を、ライターとしての目線からいくつか紹介し、ヤクザのありかたや社会についても考える。

作者の周辺での死亡事故・事件も多く、知合いの死者も少なくない。
しかし、ヤクザは基本的に害悪としながらも、編集者生活の間は基本的に楽しかったと良い、記者生活も悪くないという。
しかし、最近では社会的にヤクザは排除されている。
それに伴い、取材対象との接触が難しくなるとともに、雑誌等の購入者も減っていく…。
今、著者は、ヤクザとの関係もある企業で、アルバイトもしているという。

あとがきの最後にある言葉が印象的だった。
「ちなみに、私“個人”は愛煙家であっても、他人に推奨したことは一度も無いし、これからもすすめるつもりはない。」
タグ:ヤクザ

禁酒法―「酒のない社会」の実験(岡本 勝) [本の紹介★★★★]

ほとんど一年ぶりの更新となってしまいました。
仕事で色々良くないことがあったり、地震でおちこんだり、ログインパスワードが分からなくなったりして…。


禁酒法―「酒のない社会」の実験 (講談社現代新書)

禁酒法―「酒のない社会」の実験 (講談社現代新書)

  • 作者: 岡本 勝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/01
  • メディア: 新書


イスラム文化圏を別とすれば、酒は文化の中心的なものの一つと思っています。
それを禁止するとは、暴挙と思っています。

本書によると、18世紀後半のアメリカでは、人前での泥酔は罪であった(現代でも人前で泥酔するのはアホらしいですが)にもかかわらず、酔っ払い達が多く殖えていました。また、酒場は売春婦などが多く、いかがわしい場所でした。
知識人や女性たちは、それらに眉をひそめて居ました。
さらに、産業革命以後、効率化のために酔っていない労働者が必要となりました。
そのような勢力が一体になり、州法改正、さらには憲法改正により、酒を禁止していったのでした。

まずは酒屋を禁止し、ウィスキーなどハードな蒸留酒を禁止し、そしてビールさえも禁止。
この大変厳しい法律ですが、医療用や、購入と飲む事自体は合法など、抜け道は多いものでした。

「実験」の結果、闇酒場が殖え、法律軽視の風潮を産み、一方では会員制闇酒場からは売春婦が消えて行きました。
しかし問題は大きくなり、やがて禁酒法は廃止されることになりました。
その結果、現代のアメリカの酒環境が生まれたのです。

タイトルの「実験」という言葉の割に、その結果があまり詳しくないのが拍子抜けです。
しかし禁酒法にいたるまでの、積極派や穏健派、反対派の政治運動など、大変興味深いものです。


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物語 アメリカの歴史(猿谷要) [本の紹介★★★★]


物語アメリカの歴史―超大国の行方 (中公新書)

物語アメリカの歴史―超大国の行方 (中公新書)

  • 作者: 猿谷 要
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1991/10
  • メディア: 新書



「物語 ◯◯の歴史」ってタイトルの本は、いくつも中公新書より出ています。そのなかで初めて読んだのが今回の本。

 歴史といえば、まず政治・政権・政策、次いで経済、戦争でしょう。
 しかしこの本では、上記の問題を民衆生活の視点から捉えており、一般人の生活を想像できるものになっています。まるで、自分がいろんな時代を経験しているかのような。
 日本史で同様の感動を得たことはありません。明治維新前後で生活感覚が大きく変わっているから難しいだけなのか、あるいは本書の著者の記述力の賜物か。

 アメリカという国に対してもった印象は「常に膨張している国」(だった)ということです。外部の敵や目標がなくては、ごった煮の国民はまとめられないのでしょう。「アメリカ帝国主義」という言葉がありますが、どうやら事実のようです。
 もうひとつの負の面は、暗殺が極めて多いこと。自分の正義と権力のためには武力も辞さないという国風を感じます。

 そして一方で、上記の他に経済面も含め数々の不条理を含みながらも、時にそれを公開するという不思議な公正さも持ち合わせている国。
 アメリカンドリームを求めて血気にはやることを許容する空気。

 よくも悪くも、エネルギーの塊です。

 本書が発行されたのは、1991年。ぎりぎりで湾岸戦争に間に合い、エピローグにおいてアメリカの「正義」に批判的です。
 しかし、湾岸戦争には十分な大義名分がありました。イラク戦争を筆者がどう批判するかが興味深いところです。


書斎の王様(編集:「図書」編集部) [本の紹介★★★★]


書斎の王様 (1985年) (岩波新書)

書斎の王様 (1985年) (岩波新書)

  • 作者: 図書編集部
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1985/12
  • メディア: 新書


 書斎をめぐる文章を色々な人が書いたものを集めた本。「図書」は岩波が出す、読書家のための雑誌。らしいです。
 知っている人は一部ですが、いずれも著名人のようです。学者、作家のほか、建築家なども。著者を挙げます。大江志乃夫、尾崎秀樹、小田島雄志、倉田喜弘、小泉喜美子、椎名誠、下村寅太郎、庄幸司郎、杉浦明平、立花隆、永瀬清子、林京子、星野芳郎、村松貞次郎、山田宗睦、由良君美、吉野俊彦。
 書斎のつくりや使い方を語り、自分の身の回りにも書斎空間を造りたくさせる文章(これを期待して購入)のほか、書斎観を語り、その心のうちを楽しめる文章もあったりします。
 文学として買っても、案外満足できるかもしれません。


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ある被差別部落の歴史―和泉国南王子村(盛田嘉徳、岡本良一、森杉夫) [本の紹介★★★★]


ある被差別部落の歴史―和泉国南王子村 (岩波新書 黄版 98)

ある被差別部落の歴史―和泉国南王子村 (岩波新書 黄版 98)

  • 作者: 盛田 嘉徳
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1979/09
  • メディア: 新書


 南王子村の庄屋を一年交代で務めた家に伝わる史料(史料も一年おき)を元に、江戸時代中期から末期までの穢多村の被差別民の経済と生活を見る本。多くの被差別部落は「部落」の名のとおり、常民による本村の枝村、一部落として存在したのに対し、南王子村は部落という規模を越え、独立した村であったという。であるので、穢多身分の者の中から庄屋もでている。
「差別の歴史」というより、「貧しい集落の歴史+差別」という読み方をすべきだろう。小規模ながら高持ち(地主)もおり、農作業に従事するが、他の農村に漏れず没落農作業者は増えていく。そして、高無しの民は、雪駄などの製造や行商で糊塗をすすぐ。
 恐るべきことに、この集落では何度もの飢饉や多くの餓死者にもかかわらず、長期的には大幅に人口が増加している。差別されるがゆえのたくましさをうかがえる。

 お約束のように政治的な表現があるところもあるが、全体として庶民の生活を知るのにすばらしく、読んで楽しい本である。


タグ:日本史
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金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし() [本の紹介★★★★]


金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし

金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし

  • 作者: 三浦 佑之
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 新書


 志賀島から見つかった金印は、農民の甚兵衛さんが見つけ、お上に報告し、世間に知れ渡ったとされております。この金印が偽者であるという説は、初耳だったのですが以前からささやかれていたようでして。
 タイトルからもわかるとおり、筆者もその立場に立っております。この手の本には門外漢が思い切って無茶な説を立てていることも多いようですが、筆者は千葉大学の歴史関係の先生のようですので、ちゃんとした内容と信じましょう。

 史料をひとつひとつ洗い、事実を探求する態度ですので、実際に本物だったのか偽造だったのかに関わらず、発見当時の光景は興味深いものです。上に述べた金印発見から世に知れるまでのいきさつも、実際は少々異なったようです。また、発見場所付近からは、古墳時代以前の遺構は見つからないようです。
 そして筆者が主張する偽造の黒幕は、この金印発見で名を知らしめた、黒田家の学者・亀井南冥。たしかにちょっとできすぎた話で、疑ってみるほうがよさそうです。

 歴史を楽しみつつ、推理もの的に人間心理の裏も楽しめる、楽しい一冊です。


タグ:日本史
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日本の漢字(笹原宏之) [本の紹介★★★★]


日本の漢字 (岩波新書)

日本の漢字 (岩波新書)

  • 作者: 笹原 宏之
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2006/01
  • メディア: 新書


 タイトルを見た瞬間ひらめき、手にとって中身をパラパラめくると、期待通りのような内容。実際に読んでみると、期待以上の面白さでした。
 国字、つまり日本で作られた漢字は多く、また筆記のために簡易化された文字もたくさんあります。それらを歴史的に振り返り、時に中国などの漢字とも比較します。
 造字の容易な「漢字」は社会や文化に根付いて変化します。裃(かみしも)や麿(麻呂が一文字となった)などは、日本文化の生み出したものといえます。また地名には、ほかの場面では使われない文字も多く見つかるそうです。
 筆記の簡易化も、新しい文字を生み出します。旧字体から現在の字体への変化もそのひとつです。「広」という字、これは戦後に作られた字といわれていたようですが、少なくとも広島では戦前からこの字体を使っていたとのこと。
 世間に広く使われずとも、一部の社会(地域であったり業界であったり)で通用すれば、それは「字」であるというところが漢字の不思議なところです。


すしの歴史を訪ねる(日比野光敏) [本の紹介★★★★]


すしの歴史を訪ねる (岩波新書)

すしの歴史を訪ねる (岩波新書)

  • 作者: 日比野 光敏
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/10
  • メディア: 新書


 以前、ふな鮨の本を紹介したように、淡水魚を中心に昔ながらの熟れ鮨に興味を持っております。そして書棚に並ぶ本書のタイトルを見た瞬間ひらめき、手にとって見ると、期待通りすしの歴史をなれ鮨(熟れ鮨、馴れ鮨)から開始していました。
 鮨というのは今も昔も少しだけ特別な食べ物。その理由の大きな部分は調理の手間にあります。調理の手間を削減し早く食べるため、熟れ鮨の発酵の時間を短縮し、そして押し寿司などの早鮨、握りずしへと変貌していきます。本書では、歴史が長くその一方で消え去ろうとしている熟れ鮨を中心にあつかい、握りずしへの変化の過程を紹介しています。
 熟れ鮨といえば現代ではふな鮨ぐらいしか知りませんでしたが、今でも各地にわずかながら命脈を保っています。使われる魚は、マス、鮎、ウグイ、ハタハタ、鰯…etc。塩漬け魚を飯につけて、発行させ程よく酸味が回り……。おいしいふな鮨を食べたことのある私は、おもわず琵琶湖へ熟れ鮨を買いに行ってしまいました。押し鮨や握りずしは、皆さんも味の想像がつくでしょう。とにかく食べたくなる一冊です。



タグ:民俗学 文化
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刀と首取り―戦国合戦異説(鈴木真哉) [本の紹介★★★★]

本当は今読んでいる本を紹介したかったのですが、どうやら今日中に読みきれそうにないので、以前読んだ面白い本を御紹介します。

刀と首取り―戦国合戦異説 (平凡社新書)

刀と首取り―戦国合戦異説 (平凡社新書)

  • 作者: 鈴木 真哉
  • 出版社/メーカー: 平凡社
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 新書


 私が鈴木真哉氏の名前を知った一冊です。新書になっているこの人の著書の中でもっとも面白いものかもしれません(この3,4年に出たものは読んでいないので分かりませんが)。
 日本の武士、といえば、日本刀で戦っているイメージをお持ちの方も多いかもしれません。実際には殺傷力は低く、また短いということもあって、実戦では使われません。このあたりまでは、恐らく戦国時代好きなら多くの人が認識していることでしょう。本書ではそのことに加え、飛び道具が主な戦死傷の原因であることを、統計的に検証したものです。正直なところ驚きました、鉄砲伝来前から飛び道具が予想以上に重要であったことに。
 タイトルにあるもうひとつのキーワード「首取り」。そう、日本刀は首取りに使われたというのです。その他、当然戦いに使うこともあります。例えば組討になったときや、物陰を曲がった途端に敵と近距離で向かい合ったときなどは、取り回しの良い日本刀の出番です。
 軽やかな文章でややこしさも無く、複数回読み直しても面白い本です。


タグ:日本史

黒人大学留学記―テネシー州の町にて(青柳清孝) [本の紹介★★★★]


黒人大学留学記―テネシー州の町にて (1964年) (中公新書)

黒人大学留学記―テネシー州の町にて (1964年) (中公新書)

  • 作者: 青柳 清孝
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1964
  • メディア: 新書



 あえて黒人の大学に留学した著者がその経験や実感を中心に、アメリカの黒人差別についての考えを述べている。といっても留学したのは1956-1958年、発行が昭和39年だから、かなり古い時代のものである。法的には保障されていたとはいえ、選挙に参加することも困難だったという時代。
 アジア人は有色人種とはいえ、黒人とちがって一応白人社会で受け入れられる存在だったという。しかしあえて黒人社会に身を投じた。黒人を陽気ながらも教養とは程遠い人間が多いと冷静に評価し、自身の中に無意識のうちにある偏見も吐露している。身の回りの学生や町の人、黒人経済、アメリカの社会と幅広い視点を扱い、それを一気に読ませる文章であった。


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