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ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る(山口恒夫) [本の紹介★★★]


ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る (中公新書)

ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る (中公新書)

  • 作者: 山口 恒夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 新書


ザリガニ全般を扱った本で、筆者は神経を専門とする研究者です。
生物学者は、一つのテーマをいくつかの(類縁関係の近い)生き物で研究する人、一つの生き物をいくつかのテーマで研究する人に大別できると思います(無論、例外は多いし両方の要素が混じっている人が大半である)。
この本を読む限りでは、筆者はどちらかといえば前者でしょう。後半は、ザリガニの神経系の話です。
 前半部は民俗学的分野も含め、ザリガニ全般を扱っていて大変面白い。日本にはアメリカザリガニ意外にも移入種がいるってしってましたか? ザリガニのもつ石のようなもの(脱皮直前に殻のカルシウムを回収し固めている)が薬とされたことは? 江戸時代には外国からこの石の呼び名が伝わっていたんですよ。その他諸々、ザリガニにかかわる話しを楽しめます。
 後半の神経系に関してはさすがに専門分野であり、実際の実験データと解釈を示してあり、専門家向けの総説に近い情報量をほこります。ザリガニの平衡感覚、視覚の特徴、逃避行動、フェロモンに対する応答など、ザリガニという生き物を制御する巧妙なシステムと、その解明に「へえ」の連続でしょう。
……しかし裏を返せば専門的すぎ、一部は大学レベルの神経系の知識がないと十分理解できないかもしれません。私自身、生物を専門に学んだのですが、神経関係は苦手で嫌いだったということもあり、なかなか理解できない部分も散見されました。概念を解説するための模式図が少ないのも、理解困難な原因です。
 理解できないから得点を下げるというのも残念ですが、一般性を考えると面白さへの評価が辛くなってしまうのも仕方ありません。ですが、前半は絶対面白いし、後半も細かい原理抜きで話の筋だけ理解すればかなり面白いですよ。


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