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サムライとヤクザ ―「男」の来た道 [本の紹介★★★]


サムライとヤクザ―「男」の来た道 (ちくま新書)

サムライとヤクザ―「男」の来た道 (ちくま新書)

  • 作者: 氏家 幹人
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2007/09
  • メディア: 新書


「男」とは何であったか。
著者はまず、戦国時代や江戸時代初期の史料を引用し、かつて「男」は単なる生殖上の区別ではなく「戦闘者」を指す言葉であったことを示した
そしてその戦闘者としての「男」が、江戸時代以降(近代に至るまで)どう移り変わったかを分析する。

武士は元来戦闘者であるにもかかわらず、時代とともに「男」性を喪失し、そのギャップに苦しむ。
それは都市生活者である旗本に顕著である。
一方、武士と言いづらい下級の武家奉公人や、全く町人であるヤクザによって、「男」は(良くも悪くも)継承された。

本書に描かれる、身分の低い「男」達、そして軟弱化した「武士」の姿に、同性として悲しみを含んだ共感を感じた。

旧石器遺跡捏造 [本の紹介★★★]


旧石器遺跡捏造 (文春新書)

2000年の11月、でかいニュースがあった。
旧石器の遺跡・発掘が、捏造であったという話である。

私は考古学に特に興味が有ったわけではないが、「遠く離れた二箇所の石器の断面が合致した、これは人的交流を意味する」というものは、私も新聞で読んで驚嘆した記憶がある。
その新聞記事も、徐々に露見していった捏造の一つであった。

今回紹介するこの本では、科学報道に関わる著者が、捏造に気づかなかった研究者たちの様子をさぐる。
ある人物がいるときのみ、旧石器は見つかった。
発見率は9割を越え、偶然にしてはできすぎる確率であったが、他の研究者にとってはその高い確率こそが信用の根拠の一つになっていたという。

実は(考古学者ではなく)人類学者たちは、その旧石器の成果に懐疑的であったという。
しかしその声は、考古学の世界ではほぼ完全に無視された。
捏造が露見したあとも、研究者たちの多くは、自分の関わった遺跡が捏造だとはなかなか考えなかった。
目の前で発掘されることで自分の経験となっており、他人任せでないという確信があったからである。

この捏造で、四半世紀の考古学研究が振り出しに戻った。
発掘成果の検証可能な記録など、教訓を生かすことにはつながったが、失ったものは大きい。
マスメディアに関わる人間としての自省を感じられた。
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佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇 [本の紹介★★★]


佐賀北の夏―甲子園史上最大の逆転劇 (新潮文庫)

佐賀北の夏―甲子園史上最大の逆転劇 (新潮文庫)

  • 作者: 中村 計
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/07/28
  • メディア: 文庫


 2007年の夏の甲子園は佐賀北が優勝した。佐賀県出身の私は今でも思い出すたびに心底が湧き上がる。幸運にも甲子園球場で感染できた準々決勝の帝京線は、圧巻であった。
 さて、今回紹介する本は、その夏の佐賀北の躍進の背景と経過を纏めたもの。2008年に上梓されたものが昨年の夏になって文庫版となった。
 過去に甲子園に導いた経験のある百崎*監督の往来と監督としての苦悩、百崎を支える部長の吉冨、各選手の心情について、大会以前にさかのぼり、解き明かす。
 話は大きく、4つの章に分けて進む。監督の10年日記にみる心の中、思わぬ帝京戦での勝利と吉冨部長の勝算、大会前の選手の不満と不協和音、そして勝算なき決勝。

 思い返せば、開幕試合に始まり、引き分け再試合、そして決勝の逆転劇など、佐賀北のための夏だった。しかしその感傷に溺れない著者の筆が光る。


*(百崎の「崎」は、正確には「奇」の上部は「大」でなく「立」)


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日本語という外国語(荒川洋平) [本の紹介★★★]


日本語という外国語 (講談社現代新書)

日本語という外国語 (講談社現代新書)

  • 作者: 荒川 洋平
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/08/19
  • メディア: 新書


 初めて英語を学んだときの感覚を覚えていますか?
 私たちにとって日本語は当たり前のものでありすぎ、日本語の理解の仕方を意識することは普通はありません。しかし、日本語以外を母語とする人からみると、日本語はどのようなものでしょうか。そしてその学び方は?
 本書を読み、日本語を理解しているからこそ気づかないことが多いことを理解しました。
 そもそも(日本語に限った話ではないのですが)日本人がが中高生のころに学んだ日本語文法と、外国人が外国語として日本語を学ぶ際の文法は、まったく学ぶ方法がちがいます。すでに知っている言葉を分析することと、知らない言葉を運用する方法を習得することはまったく違うからです。
 日本語は文型、語順、動詞の後に続く言葉(~し「はじめる」、~し「た」「らしい」)によって意味が変わることが本書で説かれています。また日本人の英語を読むたびに「読みやすい」と感じていたため薄々予想していたのですが、やはり何を母国語とするかによって、理解しにくい点、起こしやすい間違え(あるいは癖)というのもあるようです。
 客観的に日本語を眺めることで、外国語学習の意欲がわいてくるかもしれません。現に、本書を読了後、もう一度英語に取り組む意欲がわいてきました。


タグ:言語
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ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る(山口恒夫) [本の紹介★★★]


ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る (中公新書)

ザリガニはなぜハサミをふるうのか―生きものの共通原理を探る (中公新書)

  • 作者: 山口 恒夫
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 新書


ザリガニ全般を扱った本で、筆者は神経を専門とする研究者です。
生物学者は、一つのテーマをいくつかの(類縁関係の近い)生き物で研究する人、一つの生き物をいくつかのテーマで研究する人に大別できると思います(無論、例外は多いし両方の要素が混じっている人が大半である)。
この本を読む限りでは、筆者はどちらかといえば前者でしょう。後半は、ザリガニの神経系の話です。
 前半部は民俗学的分野も含め、ザリガニ全般を扱っていて大変面白い。日本にはアメリカザリガニ意外にも移入種がいるってしってましたか? ザリガニのもつ石のようなもの(脱皮直前に殻のカルシウムを回収し固めている)が薬とされたことは? 江戸時代には外国からこの石の呼び名が伝わっていたんですよ。その他諸々、ザリガニにかかわる話しを楽しめます。
 後半の神経系に関してはさすがに専門分野であり、実際の実験データと解釈を示してあり、専門家向けの総説に近い情報量をほこります。ザリガニの平衡感覚、視覚の特徴、逃避行動、フェロモンに対する応答など、ザリガニという生き物を制御する巧妙なシステムと、その解明に「へえ」の連続でしょう。
……しかし裏を返せば専門的すぎ、一部は大学レベルの神経系の知識がないと十分理解できないかもしれません。私自身、生物を専門に学んだのですが、神経関係は苦手で嫌いだったということもあり、なかなか理解できない部分も散見されました。概念を解説するための模式図が少ないのも、理解困難な原因です。
 理解できないから得点を下げるというのも残念ですが、一般性を考えると面白さへの評価が辛くなってしまうのも仕方ありません。ですが、前半は絶対面白いし、後半も細かい原理抜きで話の筋だけ理解すればかなり面白いですよ。


モンゴルに暮らす(一ノ瀬恵) [本の紹介★★★]

ここのとろろ睡眠時間を削るほど忙しく、なかなか更新できませんでした…。

さて。本日紹介したい本はこちら。

モンゴルに暮らす (岩波新書)

モンゴルに暮らす (岩波新書)

  • 作者: 一ノ瀬 恵
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1991/11
  • メディア: 新書


 著者は女性で、本書出版時(1991年)の身分は、大学の助手。
 この書のタイトルにある「モンゴル」は、(まれにモンゴル共和国に場面が映ることがあるが)基本的に中国の内モンゴル自治区を指す。漢民族もいる地域であり、モンゴルと言う言葉がもたせる完全遊牧の生活ではないが、それでも牧畜が基本の社会。そこに著者は留学し、そこの男性と結婚した。
 異文化の地へ赴いてのルポタージュであり、祭りや文化、自分が生活しての出来事を、民俗学的な視線から語っている。モンゴルであること以外に、「これ」というほどのテーマも無いが、かえって内モンゴル自治区の生活を、色々と想像させてくれた。


タグ:文化 民俗学
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ふなずしの謎 (滋賀の食事文化研究会) [本の紹介★★★]


ふなずしの謎 (淡海文庫 (5))

ふなずしの謎 (淡海文庫 (5))

  • 作者: 滋賀の食事文化研究会
  • 出版社/メーカー: サンライズ印刷出版部
  • 発売日: 1995/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


 これも「滋賀県で淡水魚を食べる」で紹介済み。
 滋賀県における、鮒鮨をふくむ馴れずしについて。鮒鮨が有名だけど、滋賀県の地域によってはドジョウやウグイもなれずしにされているそうです。やはり若い人よりもある程度年齢の高い人に好まれる傾向があるようですが。貴重な文化ですので、大切にして欲しいですね。


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大名屋敷の謎(安藤優一郎) [本の紹介★★★]


大名屋敷の謎 (集英社新書)

大名屋敷の謎 (集英社新書)

  • 作者: 安藤 優一郎
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/06
  • メディア: 新書


 帯にあるフレーズは『「お屋敷」のなかのチョッピリ臭~い物語』。しかしタイトルや帯の、胡散臭いまでの軽さに相反し、良書。
 大名屋敷の一般論に始まり、出入りの百姓家に伝わる記録を元に大名屋敷の内部と出入業者の経済活動を論じている。帯の言葉に臭いとあるように、下肥えは重要な商品。その汲み取り権をめぐり、種々のサービス(野菜の提供や掃除)で大名家に取り入る。百姓といっても当然経済活動はおこなう。多くの人を動かすことで、多くの利権を得ている。
 しかし時代の進むにつれ経営が難しくなっていくのは、今に通じるものを感じる。
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タグ:日本史

自転車で痩せた人(高千穂遥) [本の紹介★★★]


自転車で痩せた人 (生活人新書)

自転車で痩せた人 (生活人新書)

  • 作者: 高千穂 遙
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2006/04
  • メディア: 新書


カバーを見るだけでは買わなかっただろう。しかし、帯にすごみがあった。確かに誰だ?ってぐらい変貌している。
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 著者はきっかけはダイエットとして自転車に乗り始めた。そして、あらゆる乗り物の中でトップレーサーと同等のものをもてるのは自転車だけといい、もはや趣味として没頭している。
 本書ではスポーツ自転車の解説と、日常生活への自転車の取り入れ方を提案している。確かに面白そうだ。現に私自身本書に感化され、スポーツ自転車に乗るようになった。

 その後、高千穂遥は以下のような本も書いている。

じてんしゃ日記

じてんしゃ日記

  • 作者: 高千穂 遙
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本


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タグ:スポーツ
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小博打のススメ(先崎学) [本の紹介★★★]

 4、5年ほど前に読んだ本ですが、最近読み直しました。面白そうな遊びをチラつかされると、わくわくする。
 著者は棋士。
 本書で取り上げられているのは麻雀、サイコロ博打、カードゲーム、おいちょかぶ、手本引き、カジノ、そして将棋。将棋は強弱がはっきりするため賭け事にならないが、練習のために指す際には昼飯などちょっとしたものを賭けて、相手に本気を出してもらうようにしているらしい。
 上にあげた中でもっとも興味を惹かれたのは、手本引き。1から6まで数字で「親」が選んだものを当てる、というだけだが、それまでに出た数字をもとに駆け引き(というか疑心暗鬼的循環思考)が面白そうだ。親が数字を選ばず、サイコロでやるものもあるそうだが、こういうのは運だけでは面白くない。
 手本引きは本格的なヤクザ博打だ。手本引きをやっていると、確実に賭博の罪で逮捕されるという。今では手本引きをやる賭場はほぼ皆無であり、それ以外の賭場も衰退気味らしい。
 思うに、博打うちの表芸である博打は黙認すべし。伝統的博打は(文化保護も兼ねて)博打うちの収入源として保障してやり、一方犯罪以外の何者でもない行為を徹底的に取り締まるほうが、ヤクザにも我々にも良い。

小博打のススメ (新潮新書)

小博打のススメ (新潮新書)

  • 作者: 先崎 学
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/10
  • メディア: 新書





タグ:文化 裏社会
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