金印偽造事件—「漢委奴國王」のまぼろし() [本の紹介★★★★]
志賀島から見つかった金印は、農民の甚兵衛さんが見つけ、お上に報告し、世間に知れ渡ったとされております。この金印が偽者であるという説は、初耳だったのですが以前からささやかれていたようでして。
タイトルからもわかるとおり、筆者もその立場に立っております。この手の本には門外漢が思い切って無茶な説を立てていることも多いようですが、筆者は千葉大学の歴史関係の先生のようですので、ちゃんとした内容と信じましょう。
史料をひとつひとつ洗い、事実を探求する態度ですので、実際に本物だったのか偽造だったのかに関わらず、発見当時の光景は興味深いものです。上に述べた金印発見から世に知れるまでのいきさつも、実際は少々異なったようです。また、発見場所付近からは、古墳時代以前の遺構は見つからないようです。
そして筆者が主張する偽造の黒幕は、この金印発見で名を知らしめた、黒田家の学者・亀井南冥。たしかにちょっとできすぎた話で、疑ってみるほうがよさそうです。
歴史を楽しみつつ、推理もの的に人間心理の裏も楽しめる、楽しい一冊です。
タグ:日本史
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