物語 アメリカの歴史(猿谷要) [本の紹介★★★★]
「物語 ◯◯の歴史」ってタイトルの本は、いくつも中公新書より出ています。そのなかで初めて読んだのが今回の本。
歴史といえば、まず政治・政権・政策、次いで経済、戦争でしょう。
しかしこの本では、上記の問題を民衆生活の視点から捉えており、一般人の生活を想像できるものになっています。まるで、自分がいろんな時代を経験しているかのような。
日本史で同様の感動を得たことはありません。明治維新前後で生活感覚が大きく変わっているから難しいだけなのか、あるいは本書の著者の記述力の賜物か。
アメリカという国に対してもった印象は「常に膨張している国」(だった)ということです。外部の敵や目標がなくては、ごった煮の国民はまとめられないのでしょう。「アメリカ帝国主義」という言葉がありますが、どうやら事実のようです。
もうひとつの負の面は、暗殺が極めて多いこと。自分の正義と権力のためには武力も辞さないという国風を感じます。
そして一方で、上記の他に経済面も含め数々の不条理を含みながらも、時にそれを公開するという不思議な公正さも持ち合わせている国。
アメリカンドリームを求めて血気にはやることを許容する空気。
よくも悪くも、エネルギーの塊です。
本書が発行されたのは、1991年。ぎりぎりで湾岸戦争に間に合い、エピローグにおいてアメリカの「正義」に批判的です。
しかし、湾岸戦争には十分な大義名分がありました。イラク戦争を筆者がどう批判するかが興味深いところです。
2011-01-09 12:41
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ttp://www.asahi.com/obituaries/update/0121/TKY201101210503.html
米国史研究草分け、エッセイストの猿谷要さん死去
2011年1月21日21時22分
米国史家でエッセイストの猿谷要(さるや・かなめ)さんが3日、前立腺がんで死去した。
87歳だった。葬儀は近親者で行った。
日本の米国史研究の草分け。黒人史の研究から経済、社会、文化の総合的な研究に進み、日米比較論を展開した。
東大出身で、日大や東京女子大などで教授を務めた。海外日系人協会常務理事も務めた。
著書は「アメリカ歴史の旅」「西部開拓史」「キング牧師とその時代」「アメリカよ、美しく年をとれ」など多数。
by 通りすがりの者 (2011-01-21 21:32)