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旧石器遺跡捏造 [本の紹介★★★]


旧石器遺跡捏造 (文春新書)

2000年の11月、でかいニュースがあった。
旧石器の遺跡・発掘が、捏造であったという話である。

私は考古学に特に興味が有ったわけではないが、「遠く離れた二箇所の石器の断面が合致した、これは人的交流を意味する」というものは、私も新聞で読んで驚嘆した記憶がある。
その新聞記事も、徐々に露見していった捏造の一つであった。

今回紹介するこの本では、科学報道に関わる著者が、捏造に気づかなかった研究者たちの様子をさぐる。
ある人物がいるときのみ、旧石器は見つかった。
発見率は9割を越え、偶然にしてはできすぎる確率であったが、他の研究者にとってはその高い確率こそが信用の根拠の一つになっていたという。

実は(考古学者ではなく)人類学者たちは、その旧石器の成果に懐疑的であったという。
しかしその声は、考古学の世界ではほぼ完全に無視された。
捏造が露見したあとも、研究者たちの多くは、自分の関わった遺跡が捏造だとはなかなか考えなかった。
目の前で発掘されることで自分の経験となっており、他人任せでないという確信があったからである。

この捏造で、四半世紀の考古学研究が振り出しに戻った。
発掘成果の検証可能な記録など、教訓を生かすことにはつながったが、失ったものは大きい。
マスメディアに関わる人間としての自省を感じられた。
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