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佐賀北の夏 甲子園史上最大の逆転劇 [本の紹介★★★]


佐賀北の夏―甲子園史上最大の逆転劇 (新潮文庫)

佐賀北の夏―甲子園史上最大の逆転劇 (新潮文庫)

  • 作者: 中村 計
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/07/28
  • メディア: 文庫


 2007年の夏の甲子園は佐賀北が優勝した。佐賀県出身の私は今でも思い出すたびに心底が湧き上がる。幸運にも甲子園球場で感染できた準々決勝の帝京線は、圧巻であった。
 さて、今回紹介する本は、その夏の佐賀北の躍進の背景と経過を纏めたもの。2008年に上梓されたものが昨年の夏になって文庫版となった。
 過去に甲子園に導いた経験のある百崎*監督の往来と監督としての苦悩、百崎を支える部長の吉冨、各選手の心情について、大会以前にさかのぼり、解き明かす。
 話は大きく、4つの章に分けて進む。監督の10年日記にみる心の中、思わぬ帝京戦での勝利と吉冨部長の勝算、大会前の選手の不満と不協和音、そして勝算なき決勝。

 思い返せば、開幕試合に始まり、引き分け再試合、そして決勝の逆転劇など、佐賀北のための夏だった。しかしその感傷に溺れない著者の筆が光る。


*(百崎の「崎」は、正確には「奇」の上部は「大」でなく「立」)


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禁酒法―「酒のない社会」の実験(岡本 勝) [本の紹介★★★★]

ほとんど一年ぶりの更新となってしまいました。
仕事で色々良くないことがあったり、地震でおちこんだり、ログインパスワードが分からなくなったりして…。


禁酒法―「酒のない社会」の実験 (講談社現代新書)

禁酒法―「酒のない社会」の実験 (講談社現代新書)

  • 作者: 岡本 勝
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/01
  • メディア: 新書


イスラム文化圏を別とすれば、酒は文化の中心的なものの一つと思っています。
それを禁止するとは、暴挙と思っています。

本書によると、18世紀後半のアメリカでは、人前での泥酔は罪であった(現代でも人前で泥酔するのはアホらしいですが)にもかかわらず、酔っ払い達が多く殖えていました。また、酒場は売春婦などが多く、いかがわしい場所でした。
知識人や女性たちは、それらに眉をひそめて居ました。
さらに、産業革命以後、効率化のために酔っていない労働者が必要となりました。
そのような勢力が一体になり、州法改正、さらには憲法改正により、酒を禁止していったのでした。

まずは酒屋を禁止し、ウィスキーなどハードな蒸留酒を禁止し、そしてビールさえも禁止。
この大変厳しい法律ですが、医療用や、購入と飲む事自体は合法など、抜け道は多いものでした。

「実験」の結果、闇酒場が殖え、法律軽視の風潮を産み、一方では会員制闇酒場からは売春婦が消えて行きました。
しかし問題は大きくなり、やがて禁酒法は廃止されることになりました。
その結果、現代のアメリカの酒環境が生まれたのです。

タイトルの「実験」という言葉の割に、その結果があまり詳しくないのが拍子抜けです。
しかし禁酒法にいたるまでの、積極派や穏健派、反対派の政治運動など、大変興味深いものです。


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物語 アメリカの歴史(猿谷要) [本の紹介★★★★]


物語アメリカの歴史―超大国の行方 (中公新書)

物語アメリカの歴史―超大国の行方 (中公新書)

  • 作者: 猿谷 要
  • 出版社/メーカー: 中央公論社
  • 発売日: 1991/10
  • メディア: 新書



「物語 ◯◯の歴史」ってタイトルの本は、いくつも中公新書より出ています。そのなかで初めて読んだのが今回の本。

 歴史といえば、まず政治・政権・政策、次いで経済、戦争でしょう。
 しかしこの本では、上記の問題を民衆生活の視点から捉えており、一般人の生活を想像できるものになっています。まるで、自分がいろんな時代を経験しているかのような。
 日本史で同様の感動を得たことはありません。明治維新前後で生活感覚が大きく変わっているから難しいだけなのか、あるいは本書の著者の記述力の賜物か。

 アメリカという国に対してもった印象は「常に膨張している国」(だった)ということです。外部の敵や目標がなくては、ごった煮の国民はまとめられないのでしょう。「アメリカ帝国主義」という言葉がありますが、どうやら事実のようです。
 もうひとつの負の面は、暗殺が極めて多いこと。自分の正義と権力のためには武力も辞さないという国風を感じます。

 そして一方で、上記の他に経済面も含め数々の不条理を含みながらも、時にそれを公開するという不思議な公正さも持ち合わせている国。
 アメリカンドリームを求めて血気にはやることを許容する空気。

 よくも悪くも、エネルギーの塊です。

 本書が発行されたのは、1991年。ぎりぎりで湾岸戦争に間に合い、エピローグにおいてアメリカの「正義」に批判的です。
 しかし、湾岸戦争には十分な大義名分がありました。イラク戦争を筆者がどう批判するかが興味深いところです。


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